髄膜腫
■病因・病態
髄膜腫(ずいまくしゅ)は、脳を覆っている膜(硬膜、くも膜、軟膜)から発生する主に良性の腫瘍です。全脳腫瘍の25%を占めます。髄膜腫は、ゆっくりと大きくなり周囲の脳細胞を圧迫していきます。発生の原因はよくわかっていません。稀に、悪性の髄膜腫である場合がありますが、髄膜腫全体の5%前後です。
髄膜腫は、髄膜のある部位ではどこでも発生する可能性のある腫瘍ですが、おおむね次のような部位で発生しやすくなっています。
- 円蓋部(大脳表面の髄膜)
- 傍矢状洞部(左右の大脳の間にある太い静脈の壁)
- 大脳鎌(左右の大脳を分けている部分)
- 蝶形骨縁(頭の底にある、前頭葉と側頭葉の境目にある蝶形骨の髄膜)
- 小脳橋角部(小脳と脳幹の間)
- 鞍結節(頭の底の中央部分)
■症状
腫瘍が小さいうちは症状として表れませんが、腫瘍が大きくなった結果として生じる頭蓋内圧亢進症状、すなわち頭痛、嘔吐、視力障害、意識障害などが表れてきます。
実際の症状は、発生部位によって異なります。
円蓋部、傍矢状洞部、大脳鎌に発生した髄膜腫の場合は、麻痺やけいれん発作などの症状が表れやすくなっています。鞍結節に発生した髄膜腫は、視力障害を引き起こし、小脳橋角部の髄膜腫は、聴覚障害が表れやすくなっています。
■診断・検査
CTやMRIによる診断を行います。造影剤を使用して撮影する造影CT、造影MRI、脳血管撮影によって、腫瘍の発生をほぼ確定することができます。
■手術・治療
無症状の場合は、経過観察を行います。3ヶ月後、6ヶ月後、1年後と定期的に検査を行い病気の進行度合いをみます。
大きさが3センチ程度までの腫瘍に対しては、「ガンマナイフ治療」も採用可能な治療法です。ガンマナイフは放射線治療の装置で、特に手術摘出が困難な頭蓋底の髄膜腫に有効です。ガンマナイフによる治療では腫瘍を消失させることはありませんが、腫瘍が小さくなるか、成長が止まる効果があります。
手術が比較的容易な場所や、腫瘍が3センチを超える大きなものに対しては、開頭手術による腫瘍の摘出が行われます。ただし、腫瘍の発生部位によっては、全摘出を行わず、大事な神経を傷つけないよう周囲の腫瘍を残しておくこともあります。この残した腫瘍に対して、ガンマナイフ治療を行うことも可能です。
■予後
腫瘍を全摘出しても、再発の可能性はあります。その確率は10年間で10-20%です。また一部の腫瘍を残した場合には、5年後に30-50%の再発があると言われています。
頭蓋喉頭腫
■病因・病態
頭蓋内中央の第3脳室・トルコ鞍と呼ばれる頭蓋骨のくぼみ(脳下垂体のある場所)の中や直上などにできる腫瘍です。成人と小児で腫瘍のでき方に違いがあります。小児の場合は、石灰沈着が見られ、黄褐色〜濃緑色のモーターオイル状の液体が溜まった腫瘍の袋(シスト)ができやすいです。成人の場合は、石灰化の例は少なくなっています。
■症状
近くにある視神経、視交叉が圧迫されるため、視力や視野の障害が起こります。また、下垂体の機能が低下するため、小児の場合、身体発育が遅れ、低身長、薄い毛髪、基礎代謝の低下等が見られます。視床下部症状として、低体温、傾眠、尿崩症、電解質異常が起きます。また、腫瘍が上方に発展していくと水頭症となり、頭蓋内亢進症状(頭痛、嘔吐、意識障害など)が発生します。成人の場合、視力、視野障害、記憶障害等で発症することが多くなっています。
■診断・検査
X線撮影、CT、MRIで腫瘍を確認することができますが、内分泌機能の検査も必ず行います。
■予後
5年生存率は90%程度です。
聴神経腫瘍
■病因・病態
「聴神経腫瘍」(ちょうしんけいしゅよう)は、聴神経を含む細胞から発生する良性の腫瘍です。神経を包んでいる膜、つまり鞘(さや)の部分から発生するため、「聴神経鞘腫」(ちょうしんけいしょうしゅ)とも呼ばれます。聴神経には、聴覚に関係する蝸牛神経と平衡感覚に関する前庭神経がありますが、前庭神経から発生することが多くなっています。
腫瘍が大きくなるにつれ、周囲の脳細胞を圧迫していきます。
聴神経腫瘍は左右のどちらかにできます。遺伝することはありませんが、稀に両側にできたり、他の神経にできたり、家族内で遺伝的に発生することがあります。この場合は、「神経線維腫症」(しんけいせんいしゅしょう)である可能性もありますので、脊髄などの検査 も追加する必要があります。
■症状
初期症状としては、耳が聞こえなくなる、耳鳴りやめまいがするといった聴神経に関わる障害が発生します。突然耳が聞こえなくなる突発型難聴を起こすこともあります。腫瘍が大きくなるにつれ、顔面のしびれ、痛みや視野障害、歩行障害などが発生し、さらに脳脊髄液の流れが阻害され、脳に水がたまる「水頭症」が併発し、頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進による症状が発生します。
■診断・検査
CT、MRIによる検査を行います。聴覚、平衡感覚など耳鼻科的検査も同時に行います。
■手術・治療
腫瘍が小さいうちは、MRIなどによる定期検査を実施しつつ、経過観察を行います。経過観察を通じて、腫瘍の増大が見られた場合には速やかな治療が必要となります。
治療方法としては、ガンマナイフと呼ばれる放射線治療、または開頭手術による摘出の2つの選択肢があります。ガンマナイフは、3センチ以下の腫瘍に適用可能です。入院期間も短く、剃髪も不要ですので患者さんの負担は軽い治療方法です。ただ、ガンマナイフは腫瘍を小さくしたり、成長を止める効果がありますが、腫瘍を除去するものではありません。
腫瘍が3センチ以上の大きさの場合には、ガンマナイフでの治療は困難であり、外科的手術による腫瘍摘出を行います。周囲の細胞との境界が明確な良性腫瘍ですので、全摘出可能ですが、重要な神経を痛めないため一部の腫瘍を残しておくこともあります。
■予後・合併症
良性の腫瘍ですので、予後は良好です。全摘出すれば完治します。一部を残した場合には、再発の可能性が若干高くなります。
合併症としては、開頭手術の場合で、顔面神経麻痺が発生する可能性があることです。ガンマナイフは、放射線を用いた治療ですので、放射線被ばくによる障害が発生することがあります。