主な研究内容

悪性神経膠腫に対する
腫瘍細胞および
樹状細胞との融合細胞を
用いた免疫療法

悪性神経膠種および神経膠芽腫は脳にできる悪性腫瘍の中では頻度が高く、その一方で手術治療および手術後の放射線治療・テモダール化学療法を併用する標準治療のみではいずれ再発を来します。そのため新たな治療法の開発を目的とした様々な臨床研究が世界中で行われており、現在当科では腫瘍細胞および樹状細胞との融合細胞を用いた免疫療法を標準治療と同時に行う臨床研究を行っています。

2016年3月までに私たちは、樹状細胞と腫瘍細胞との融合細胞を用いた免疫療法とテモダール化学療法との併用療法を、悪性神経膠腫と診断された約50例の患者さんに対して行いました。このうち、初発膠芽腫の患者さん22例に対してこの治療を行ったところ、5年生存率が約40%(標準治療では約10%)、生存期間中央値(治療を受けた患者さんの内、半数の方が亡くなるまでの期間)が30ヶ月(標準治療では約17ヶ月)という良好な結果でした。

2022年1月現在は上記の治療効果を確認し、かつより多くの患者様のお役に立てるよう2020年に新外来棟6階に移設された細胞加工施設(JIKE-CPF)を使用して、【悪性神経膠腫に対する腫瘍細胞並びに腫瘍形成細胞と樹状細胞との融合細胞を用いた免疫療法(jRCTc030190122)】という臨床試験を継続しています。

解説図 解説図

最近の研究により、悪性神経膠種に対する免疫治療は長期に渡って治療効果のある方と残念ながら効果がない方がいらっしゃることが分かってきました。
しかし、なぜこれらの効果の差が生じるかについては十分に分かっていませんでした。
我々のチームは上記の点に着目し、どういった方に免疫治療の効果があるのかを予測する因子(バイオマーカー)について解析を行っています。
これらのバイオマーカーを組み合わせて免疫治療の効果をあらかじめ予測できるようになれば、患者様一人一人に合わせて免疫治療を受ける利点について推定できるようになると考えております。

論文

  1. Akasaki Y, Kikuchi T, Homma S, Koido S, Ohkusa T, Tasaki T, Hayashi K, Komita H, Watanabe N, Suzuki Y, Yamamoto Y, Mori R, Arai T, Tanaka T, Joki T, Yanagisawa T, Murayama Y. Phase I/II trial of combination of temozolomide chemotherapy and immunotherapy with fusions of dendritic and glioma cells in patients with glioblastoma. Cancer Immunol Immunother. 2016 ;65(12):1499-1509.

  2. Akasaki Y, Kikuchi T, Irie M, Yamamoto Y, Arai T, Tanaka T, Joki T, Abe T. Cotransfection of Poly(I:C) and siRNA of IL-10 Into Fusions of Dendritic and Glioma Cells Enhances Antitumor T Helper Type 1 Induction in Patients With Glioma. JOURNAL OF IMMUNOTHERAPY 2011;34(2): 129-136

  3. Kikuchi T, Akasaki Y, Abe T, Fukuda T, Saotome H, Ryan JL, Kufe DW, Ohno T. Vaccination of glioma patients with fusions of dendritic and glioma cells and recombinant human interleukin 12. J Immunother. 2004; 27(6):452-9.


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