医局員活動報告

活動報告
2026年08月18日

武井 淳助教の原著論文がNeuro-Oncology誌に掲載されました

ヒト免疫系を再構築した新たな神経膠芽腫マウスモデルを開発

東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座の武井 淳助教が筆頭著者を務めた原著論文が、Neuro-Oncology誌に掲載されました。

新たな治療薬については、患者さんへの投与に先立ち、マウスなどを用いた非臨床試験によって有効性と安全性が検討されます。しかし、免疫療法をマウスで評価しても、マウスとヒトでは免疫系が大きく異なるため、患者さんで同じ治療効果が得られるとは限りません。このため、動物実験の結果から臨床効果を正確に予測することが難しく、免疫療法の開発には多くの時間と費用を要してきました。

本研究では、ヒトの骨髄系免疫細胞の分化に必要なサイトカインを発現する重度免疫不全マウスが用いられました。骨髄抑制処置後のマウスに、ヒト臍帯血由来のCD34陽性造血幹・前駆細胞が移植され、マウス体内にヒト免疫系が再構築されました。さらに、放射線治療に抵抗性を示す患者由来神経膠芽腫細胞が脳内へ移植され、ヒトの腫瘍細胞と免疫細胞の相互作用を解析できる新たな神経膠芽腫モデルが作製されました。

従来の免疫ヒト化マウスでは、ヒト造血幹・前駆細胞から分化する免疫細胞の種類が限られ、特に骨髄系細胞の再現が不十分でした。本研究で作製されたモデルでは、T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄系細胞など、多様なヒト免疫細胞が腫瘍内へ浸潤しました。研究グループは、フローサイトメトリー、免疫組織染色、単一細胞RNA解析を用いて腫瘍内の免疫細胞を解析し、ヒトの再発神経膠芽腫の解析データと比較しました。その結果、本モデルの腫瘍では、ヒトの再発神経膠芽腫に認められる免疫抑制性微小環境と類似した免疫細胞の構成と遺伝子発現が確認されました。

今後、本研究で確立されたモデルを用いることにより、神経膠芽腫に対する新規免疫療法の有効性や免疫反応が、従来よりもヒトに近い条件で検討されると期待されます。その結果、患者さんへの投与前に、治療効果や安全性がより正確に予測される可能性があります。また、同様の方法をほかのがん種へ応用する研究も期待されます。

論文情報

Takei J, Furudate K, Nagaoka-Kamata Y, et al. “Exploring the immune
environment of glioblastoma in humanized mouse models.” Neuro-Oncology.
2026;28(7):1634–1648. doi: 10.1093/neuonc/noag073.


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