脳腫瘍

神経膠腫( グリオーマ)

 脳には、神経細胞の他に神経細胞を支えたり、守ったりする細胞がありこれらをまとめてグリア細胞と呼びます。グリア細胞が腫瘍になったものを神経膠腫(グリオーマ)と呼びます。グリオーマの中には、手術中に正常の脳細胞との区別がつかない場合があり、正常の脳を傷つけないように、かつ、できるだけたくさんの腫瘍を摘出することが求められます。また、グリオーマは、脳内に根をはるようにじわじわと浸潤するため、手術のみで治療を完結することは非常に困難です。
 これらの難題を解決すべく、当科では、診断から治療まで集学的な治療を行えるように環境を以下の様に整えております。
<診断方法>5-ALA(アミノレブリン酸)蛍光腫瘍診断、3D multifusion(重畳画像)
   
<手術方法>覚醒下手術、光線力学療法
 さらには全国に先駆けて導入したハイブリッド手術室によって、術中ナビゲーションシステム、術中CT撮影などを利用した脳腫瘍手術を行う事が可能となり、リアルタイムに腫瘍摘出程度の把握や正常組織の損傷を回避することができ、安全かつ確実な脳腫瘍手術が可能となっています。

<集学的治療>放射線治療、化学療法、腫瘍治療電場に加えて、
当科独自に開発した免疫療法というオーダーメイド治療を行っています。

また小児脳腫瘍に対しては、小児科と連携し患者さんに寄り添う診療を行っています。
当科の特色である診断・治療方法については以下のとおりです。

5-ALA(アミノレブリン酸)を用いた術中蛍光診断

 脳腫瘍治療の第一歩は手術による摘出です。できるだけ多くの腫瘍を摘出し、病理診断に基づいて残っている腫瘍に対する集学的治療を進めていくことが極めて重要です。ところが、グリオーマの中には、手術中に正常の脳細胞との区別がつかない場合があります。
 5-ALAは、手術当日の朝に患者さんに内服していただくことで、手術中にグリオーマがピンク色の蛍光を発します。そのため、取り残した腫瘍を的確に見つけ、摘出することが可能になります。

光線力学療法(PDT)

 光線力学療法は、手術中に脳にレーザーを当てることで、正常の脳細胞を傷つけることなく、腫瘍細胞を攻撃する治療です。グリオーマは脳細胞に根をはるように成長するため、5-ALAによって蛍光を発する腫瘍を摘出してもなお残ってしまいます。また、5-ALAは表面に残った腫瘍しか見つけられませんが、光線力学療法では、レーザー光を当てた表面だけでなく、5mm程度の深さまで効果が及ぶと言われています。
 光線力学療法は、悪性グリオーマの患者さんに使用することができ、治療のためのお薬は手術前日に点滴で投与されます。
 このお薬は、光エネルギーによって効果を発揮するため、直射日光のような強い光に当たるとやけどを負ったり、網膜が傷ついて視力が低下してしまう恐れがあります。そのため、投与後は2週間程度強い光を避けていただく必要がありますが、この期間は通常入院中であり、スタッフによって光の量が調整されますのでご安心ください。

レーザー光が腫瘍細胞を攻撃する仕組み

腫瘍治療電場(TTF)

 従来の放射線治療や化学療法とは全く異なる仕組みの治療ですが、グリオーマの中でも最も悪性度の高い”膠芽腫”と呼ばれる脳腫瘍に対してのみ行うことができます。患者さんの頭部に電場を発生させることで、腫瘍細胞が分裂できなくなり死滅するというものです。
 詳細は下記のリンクをご参照ください。

膠芽腫に対する腫瘍治療電場療法(オプチューン®)について

覚醒下手術

脳腫瘍の手術では、腫瘍をできるだけ多く摘出することだけでなく、患者さんの脳の機能を守ることも極めて重要です。しかしながら、手術中は全身麻酔がかかっており、実際に患者さんの手足が動かなくなったり、言葉が話せなくなっていないかを知る術はありません。
そこで当院では、2020年2月より覚醒下手術を導入し、手術中に患者さんに覚醒していただき、運動や言語の機能を確認しながら腫瘍を摘出することが可能になりました。覚醒下手術は、麻酔科やリハビリテーション科、看護師部や臨床工学部など、多くの部署が連携し、阿吽の呼吸で手術を進めることが重要であるため、難易度の高い手術と言われています。特に、手術中に目が覚めても痛くないように鎮痛薬を投与したり、手術中に患者さんが不安にならないような様々な配慮がなされることで、患者さんとともに手術を成功に導いていく必要があります。つまり、患者さんもチームの一員として治療に参加していただくこととなります。
 覚醒下手術が可能かどうかについては、外来で担当医とよく相談しながら検討していきます。


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