脊椎脊髄疾患

キアリ奇形・脊髄空洞症

脊髄空洞症

脊髄空洞症は脊髄の内部に脳脊髄液と同様の無色透明な液体が貯留し空洞を形成された状態を指します。発生頻度は成人10万人あたり8.4人/年との報告もありますが、MRIが容易に撮影できるようになり、偶然に指摘される場合も多くみられるようになりました。脊髄空洞症の原因となる病気は様々で、1984年から2015年8月までの期間で当院において治療を行なった脊髄空洞症患者767例の内訳は、キアリ1型奇形が584例(76.1%)と最も多く、脊髄癒着性くも膜炎95例(12.4%)、脳低部くも膜炎49例(6.4%)が続きます。

キアリ1型奇形

キアリ奇形は4つのタイプに分類されており、小脳扁桃及び小脳下葉内側が延髄に沿って脊髄側へ下垂したものをキアリ1型奇形としています。

症状

症状は多岐にわたりますが、後頭蓋窩の圧迫による症状と脊髄の障害による症状に分けられます。
後頭蓋窩の圧迫による症状は、咳やリキんだ時に頭痛を感じたり、めまいや嚥下障害、睡眠時無呼吸などなどが挙げられます。
脊髄の障害による症状は主に脊髄空洞症によるもので、左右どちらか、または左右両方の手や腕のしびれや痛み、感覚低下がみられます。空洞が進行すると運動麻痺も見られることがあります。

診断

診断にはMRIが有用です。また頭部CTによる後頭骨、上位頚椎をはじめとした形態学的評価も必要となります。

治療

脊髄空洞症の原因は様々ですが、背景には脳脊髄液の流れが悪いことが存在していると考えられ、これをどのように解除するかが治療方法の手がかりになります。
キアリ1型奇形による場合は大孔減圧術を行います。これは狭くなった脳と脊髄のスペースを広げるために後頭骨と第1頚椎を削り、脳と脊髄を包んでいる硬膜を切開して人工硬膜を当てて縫い広げる手術です。症例によっては小脳扁桃を一部焼き縮めたり、脳脊髄液の流れを保つためにチューブを入れることもあります。傷は5cm程度で、うなじの髪の生え際に収まる程度で行います。

大孔減圧術

薬物療法

手術前から神経細胞にダメージを負ってしまった場合や、手術を行なっても症状の進行を防止できない場合の痛み症状に関してはプレガバリンやミロガバリンといった神経痛に対する痛み止めを使用します。


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